映画の題材はパーキンソン病を取り上げていますが、患者さん当事者だけが状況に向き合うのではなく、みんなが一人ひとり主体的に自分ごととして考えていく発想が必要だと考えます。成長社会においては、効率性・画一性・正確性が求めれてきたがゆえに、自分自身の存在意義を見失って久しい時代が続きました。コロナ禍もあり、社会の当たり前が見つめ直され、多様性のあり方が広がっている近年、ありのままの自分を受容していく姿勢が大切になってくるのだと思います。本作でも病気を通じて、自分らしさを主人公が取り戻していきながら、自分の体はもとより、家族や職場の人間関係を大切にしていく変容を描き、自分ひとりで頑張るのではなく、他者との関係性を構築させながら、感謝や愛が自然と生まれていく現代社会に求められている人のあり方を描いていきます。
少子高齢社会を迎え、これから介護や福祉医療分野での課題は益々増えていくことと思います。社会の様式や価値観が様変わりする現代において、私たちは一人ひとりが自分たちの人生における大切な価値観やあり方を見つめ直し、世代や職種を越えて、皆でお互いを助け合っていく協働関係の意識が求められていると考えます。パーキンソン病以外にも様々な病気と向き合って生きている方々が、自分一人の苦しみとして孤立されることなく、社会全体として各々の悩みや苦しみを分かち合い、生きることを未来志向で捉えていける勇気と希望を届けていきたい。自己を受容し、失敗を恐れず変容することで、社会が寛容さで満たされていく。そんな社会の実現に向けて、全身全霊で本作を仲間と共に産み出していきます。